1988-12-20 第113回国会 衆議院 法務委員会 第5号
行刑官と受刑者との間に信頼関係が、先ほどあるという見解がありましたけれども、これは行刑官の側からそう思っているだけであって、受刑者の方は決して思ってないです。心の中では、このやろう、出たら次は絶対に見つからないようにさらに大きな仕事をやろう、こういうことで余計利口になることを考えているに違いないのです。
行刑官と受刑者との間に信頼関係が、先ほどあるという見解がありましたけれども、これは行刑官の側からそう思っているだけであって、受刑者の方は決して思ってないです。心の中では、このやろう、出たら次は絶対に見つからないようにさらに大きな仕事をやろう、こういうことで余計利口になることを考えているに違いないのです。
これはもう絶対にどの行刑官も私は考えておることだと思いますが、いままで無期懲役になりまして二十年というような長期間置かれた者は非常に少ないのでございまして、いずれは出ていく人物であると。出ていくようにするためにいろいろな作業もさせ、矯正処遇を行なうわけでございます。
なお、ただいまの職員がき然とした態度、そうして寛容と忍耐の精神を持ったほんとうの行刑官としての態度に徹するようにさらに指導につとめていきたいと思う次第でございます。
○説明員(鈴木忠一君) 私が最前執行吏を行刑官に比較したのは、本来の官吏として執行吏という制度を設けた場合に、できないという意味じやなくて勿論できる。できるけれども、行刑官に比べられるべきものであるから、その待遇として、待遇問題については通常の官吏と異なる待遇を以て臨まなければならないだろうという趣旨において申上げた意味なんです。その点は伊藤委員の只今の御発言と同趣旨でございます。
そして今職務の本質においていわゆる刑訴の場合におけるところの行刑官にひとしいようなものであると仰せられております。まさにその通りです。併し行刑官の場合には、これよりももつといやな仕事をしておるのです。死刑もやるんです。生きておる人間を長年月拘禁して見守つておる。この仕事の不愉快さというものは執達吏の比ではないのです。これが官吏で今日ちやんと賄われておるじやないですか。
もちろん占領軍と折衝の關係もいろいろあるようでありますけれども、しかもこういうような状況でありますがゆえに、先般神戸で行刑官が囚人に殺されたというような悲慘なる犠牲者を出している結果もあるのであります。殊に近畿には特別な事情がありまして、日本には五つしかないところの拘置所が三つもある。女だけの刑務所がある。少年刑務所が二つある。
行刑官につきましても同樣でありまして、先程阿竹委員からお説がありました行刑官が受刑者の尊敬をかち得ていないということが、刑務所における不祥事の發生原因である。誠にその通りでありまして、静岡事件などを調査いたしましても、主たる原因はそこにあつたのであります。彼らは前科者であるに拘わらず、その刑務所の役職員が智能においても低いし、その待遇においては誠に悲慘な状況にありますることを眼前に見ております。
要は実質をとることが大切なのでありまして、どうぞ今おつしやいましたところに基きまして、今後の行刑官廳のその目的達成のできるような線で強力に改革を行なつて頂きたいと考えるのであります。
是非私はそのためには待遇を檢察官、司法官と同格にすることは勿論といたしまして、良き人を得る、幅の廣い、奧行のある、單に法律だけを知つているというような人でなく、十分に文化的教養と思想、感情、人道主義的な、センチメントにも富んでいるところの行刑官を沢山得たい、こう考えている次第でありまして、これには特別の教養の方法が必要であるということも痛感しているのであります。